窓に関する基礎知識

いい家のためには窓の検討はおろそかにできない

ここでは窓に関する基礎知識をまとめてみたいと思います。

基礎知識と言いながらも、窓は分類の仕方により、多くの種類があるので、全体としては結構なボリュームになります。

自分自身で主体的に窓を検討するために必要な知識となりますので、ご活用いただければと思います。

ここでは、以下のようの切り口で窓をご説明したいと思います。

目次

サッシの素材

アルミ

サッシの代表的素材で、耐候性や防火性に優れており、強度もあります。軽いので、開閉操作がやりやすいです。

ただし、熱伝導率が高いので、断熱性に劣るのが一番の短所になります。

基本的に腐食しにくく、サビにも強い素材ですが長期間埃などが付着していると腐食することもあります。

他の素材比べて価格が安いので、限られた予算の中ではアルミサッシを選択される方が多くなっています。(約6割)

樹脂

樹脂サッシはドイツで生まれ、北欧や北米など寒冷地で広く普及しています。

日本ではどの程度採用されているかというと、新築・建て替えのサッシ選びを見ている(注文住宅と住宅設備に関する動向調査2006)と、3割弱の方が樹脂サッシを選んでいるという結果になっています。

上記の通り日本全国でみれば約6割の方に選ばれているアルミサッシがシェアとしては高くなっていますが、樹脂サッシは、北海道や東北といった寒冷地ではかなり多くの方が採用しています。(つまり裏を返せば寒冷地以外ではアルミサッシを選択される人は6割よりもずっと多いということになります。)

主な材料は、塩化ビニール樹脂ですが、その一番の特徴は、熱伝導率が低いということです。(熱伝導率の高いアルミに比べて約1,000分の1)つまりアルミよりも圧倒的に断熱性に優れています。このためアルミに比べて結露を発生させにくく、高断熱性のため寒冷地での使用が多くなっているのです。

ただしアルミよりも強度が弱いので、厚みのある構造になりやすく、キズはつきやすくなります。またテクスチャー、風合いに関しては好みが分かれ、見た目で敬遠する方もいます。

価格はアルミより高くなるので、断熱性能向上とコストアップとの兼ね合いで選択するかどうかを判断していくことになります。

自然素材の家づくりを検討されている方が多くなっていますが、木製サッシはその選択肢の一つになります。

この素材をサッシに使用することで、アルミサッシよりも断熱性能に優れ、結露はしにくくなりますし、何よりも質感や風合いは他の素材に代替できないものです。

ただし、他の素材に比べて扱いにくくなるのは避けられません。
乾燥技術は発達したとは言え、多少の反りや狂いが起こる可能性はありますし、メンテナンスは他の素材に比べて基本的に楽ではありません。(最近はメンテナンスが従来よりも楽な商品も出てきているようですが・・・)

そして何より高価です。(YKKやTOSTEMといった大手ブランドの商品ラインアップにはなく、価格設定は一番高くなります。)

樹脂サッシ同様、そのコストアップとメリットとの兼ね合いで決めていくことになりますが、ご予算にある程度余裕がなければ選べないでしょう。

複合サッシ

このタイプは近年いろいろと商品化されています。

これは複合という言葉通り、異なる素材を組み合わせたサッシです。

基本的にはアルミだけでは断熱性能に劣るので、断熱性を高めるために、他の素材を組み合わせています。

素材の特徴を生かし、例えば耐久性・耐候性が要求される室外側にアルミを使い、室内側に断熱性の高い樹脂や木を組み合わせるなどしたものがあります。

開閉タイプ

いろいろありますが代表的なものを挙げていきたいと思います。

横引き窓

住宅で使用される最も一般的な窓です。

窓を左右どちらかにスライドさせて開閉するタイプです。

開閉方法によりタイプが分けられ、一方だけが開く片開き、左右から開ける引き違い、中心から開ける引き分けがあります。

掃き出し窓(外部に人が出入りできる大型の窓で、窓の下枠は室内の床の高さと差がない窓)や腰高窓(壁面の中ほどから上、ほぼ腰の高さにある窓)など様々なタイプで用いられます。(配置による窓の分類については後述します。)

このタイプは開閉のために隙間を必要とする(ある程度の隙間がなければ開閉できない)構造上、気密性がある程度落ちることは避けられません。

上げ下げ窓

ガラス戸が窓枠に沿って上下にスライドして開閉する窓です。

特に北米や北欧などで親しまれているタイプで、ハングウィンドウとも呼ばれます。

上下2枚とも動くダブルハングと、片方だけが動くシングルハングがあります。ダブルハングでは上下からの通風が可能です。

開閉が壁の厚みの中で収まるので場所をとりませんし、気密性が高いメリットもあります。

フィックス(FIX)窓

開閉できないガラス窓で、はめ殺し窓とも呼ばれます。

採光が主な目的ですが、装飾、デザイン性でも採用されます。

形状は様々で、一番多い長方形以外にも、正方形、丸(半円)、三角など何でもありです。異なる形状のものを組み合わせて、個性的な外観やインテリアデザインとしたりするなど、デザインのポイントに使用することもあります。

開閉ができないため、特に高い位置に採用する場合には掃除の方法に配慮しておく必要があります。

滑り出し窓

窓が外側に向かって滑り出して開閉するタイプの窓で、縦滑り出し窓と横滑り出し窓があります。

縦滑り出しは、窓上下の溝に沿って横に滑り出すタイプで、一般的な横引き窓に比べて室内側に風を取り込みやすくなります。左右両方に縦滑り出し窓を設けた両縦滑り出し窓もあります。

一方の横滑り窓は、横方向の上側を軸として外部に押し出す窓枠の左右の溝に沿って動くタイプで、ガラス部分がひさしのようになり、雨が吹き込まず通風を確保することができます。

オーニング窓

横滑り出し窓のサッシ障子が縦に数枚つらなったような窓です。

下のルーバー窓と似ていますが、ガラス毎にサッシがあるので、次のルーバー窓より気密性、防犯性はいいです。

ルーバー窓(ジャロジー)

ガラスでできた羽状のルーバーを回転させて開閉する窓で、オーニング窓と形状は似ていますが、オーニングと異なり個々のガラスに枠はなく、ハンドルを回すと全てのガラスが開く構造になっています。

通風や換気に優れているので、トイレや浴室などに多用されていますが、比較的簡単にガラスを外せることから、防犯性、気密性に劣ります。

外倒し窓(押し出し窓)

窓枠の下部を軸として窓の上部を外側(室外側)に倒して開ける窓。

外に向かって空気が流れやすいため、排煙や湿気をスムーズに外に逃がすことができますが、雨が室内に入りやすい難点があります。

内倒し窓

窓枠の下部を軸として、窓の上部を内側(室内側)に倒して開ける窓。

出窓

建物の外壁より外側に張り出した窓。

張り出した部分が台形になった台形出窓や弓形に張り出した出窓(ボウウインドゥ)、長方形や多角形(ベイウィンドウ)さまざまなデザインがあります。

折りたたみ窓

折れ戸(2枚以上の扉を蝶番で連結して、開いたときに折り畳む形になる戸)のような窓。

開口部を大きく開くことができるため、室内と庭などのオープンエアと一体化させたい場合などに適しています。

ガラスの種類

ガラスは、大きく分けると、「一般ガラス」 と「機能ガラス」 に分類されます。

一般ガラス

私たちが長年慣れ親しんできたガラスで以下のようなガラスです。

フロート板ガラス(透明ガラス・単板ガラス)

もっとも一般的な平板のガラスです。様々な板ガラスの基本型といえます。平面が平滑で歪みがなく、透視性や採光性に優れています。窓や建具、鏡などに用いられています。

網入板ガラス

ガラスが破損しても破片が飛び散らないように、金属の網を封入したもの。

炎に強いのが特徴で、火災の際の延焼や類焼を防ぐ効果を持つものです。延焼を防ぐ効果のあるガラスを使用しなければならない場所は、消防法で定められています。

「網入板ガラス」は、防犯性能もあると誤解している方も多いかもしれません。破片の飛散や脱落はしにくいのが特徴ですが、防犯性能を期待できるものではありません。

型板ガラス

ガラスの片面に型模様をつけて、光を通しつつ適度に視線を遮ることのできるガラスです。代表的なのが「くもりガラス(不透明ガラス)」です。

プライバシーを守りながらの空間づくりが可能です。近隣や道路からの視線が気になる場所、浴室や洗面、トイレなどで使用されます。

すり板ガラス

ガラスの片面に珪砂などで摺り加工をした不透明なガラスです。

機能ガラス

現代では、生活様式や時代の変化に伴い、一般ガラスにはない、より高い機能を持つガラスが開発され、商品化されています。

それは、「複層ガラス」や「強化ガラス」、「合わせガラス」と呼ばれるものです。

これらの「機能ガラス」は、最近の住まいには多く取り入れられています。

すでに家づくりを終えた方への調査によると、「複層ガラス」を取り入れている方が、75.4%。かなり多くの方が取り入れているのが分かります。分譲マンションでも「複層ガラス」が標準仕様となっている例をみるようになりました。

また、「防犯ガラス」も43.8%の人が取り入れているという結果が出ています。

<出典:「注文住宅と住宅設備に関する動向調査2008」 リクルート「月刊ハウジング」調べ>

住宅の高気密・高断熱化が進み、窓やドアといった開口部にも断熱性能が求められるようになってきています。「複層ガラス」を標準仕様としている住宅メーカー商品も増えていることも、多くの方が取り入れていることに影響しているのでしょう。

このように、省エネルギー性や居住性向上のために新築では複層ガラスが採用されるケースが多くなってきているものの、全体で見た時の普及率は先進国の中では最低レベルとなっています。

更に複層ガラスのうち、その中空部に特殊な金属膜を設けたLow-E複層ガラスは、欧米の普及率が5~6割とも言われているのに対して、日本は1%に満たず依然非常に低い普及率となっています。

それでは、それぞれの機能ガラスについて見ていきましょう。

複層ガラスについては、説明しなければならない内容が多いので、まず「強化ガラス」と「合わせガラス」についての特徴を取り上げ、最後に「複層ガラス」の特徴を見ていきたいと思います。

強化ガラス(安全ガラス)

衝撃強度、曲げ強度を高めたガラス。「フロート板ガラス」を高熱処理、急激に冷やしてつくられたものです。熱にも強く、割れても破片は顆粒状になるため安全なので、大ケガとなる心配がありません。

窓だけでなく、ガラス入りの室内扉や収納扉などでも用いられています。小さなお子さんやお年寄りがいるご家庭で、室内にガラスを用いる場合には検討したい素材でしょう。「フロート板ガラス」よりも割れにくいものですが、防犯面での性能は期待できません。

合わせガラス

2枚以上の「フロート板ガラス」の間に、柔軟で強靭なフィルムの中間膜をはさんで加熱・圧着させたガラス。風圧に強く、割れても飛び散ることがほとんどないのが特徴。中間膜の厚さや性能に工夫を持たせることで、さまざまな特徴を持つ製品もみられます。

中間膜を厚くすることで、突き破るのに時間がかかり防犯性に優れる「防犯ガラス」は、この「合わせガラス」のひとつ。その他、ガラスの脱落防止性能が優れた「防災ガラス」、遮音効果のある中間膜を用い、防音性能の高い「防音ガラス」などもあります。

複層ガラス

複層ガラスはスペーサーと呼ばれる金属部材で、複数のガラスの間に中空層を持たせたガラスです。

2枚または3枚の板ガラスの間に、スペーサーを用いて空間をつくり、乾燥した空気の層を封入することで断熱性を高めています。
(因みに複層ガラスのことをペアガラスと呼ぶケースもありますが、これは旭硝子の登録商標ですので、一般的には複層ガラスと呼びます。)

その特長は以下の通りです。

断熱効果
対流が起こらない状態の空気は断熱性能が高いという性質を利用していて、密閉された中間層がその役割を果たしています。

中間層は通常6mmと12mmの厚さがあり、12mmのほうが断熱性能に優れています。因みにそれ以上の厚さになると空気の対流が生じるため断熱性能は変わらなくなります。

断熱性能をさらに高めるため、中間層を気密化して真空にしたり(メーカーでは真空にしている商品は複層ガラスと区別して真空ガラスとしています。)、アルゴンガス等を中間層に使用している商品もあります。

日本の一般的な複層ガラスでは2枚の板ガラスが使われていますが、欧州では中間層にガラスを追加し、3枚の板ガラスで構成されている製品があります。

結露防止
住宅にとっての大敵である結露は居室側と外側の温度差が原因となって発生するため、密閉された中空層により断熱性能を高めて温度差を少なくすることで、結露防止に効果があります。

このような特長を持つ「複層ガラス」ですが、ガラスを複層にして機能を高めるだけでなく、複層ガラスのガラス自体の機能性を高めたものが、Low-E複層ガラスです。

Low-E複層ガラス

「Low-E」は、英語の"Low Emissivity"の略称で、「低放射率」を意味します。普通の単板ガラスの放射率は0.85程度ですが、Low-Eガラスの放射率は0.1以下になります。この放射率が低ければ低いほど赤外線を反射させ、熱を通さないということになります。

Low-Eガラスはガラス表面に、薄い金属膜などをコーティングすることで、太陽の赤外線、紫外線をカットしたり、室内の熱が逃げないように断熱しますが、通常は複層ガラスに用いられるため、Low-E複層ガラスになります。

Low-E複層ガラスには、以下のように主に2つのタイプがあります。

<以下の画像の引用: YKK ap

断熱タイプ

断熱タイプ

複層ガラスの室内側ガラスの中空層側に金属膜をコーティングすることで、暖かい太陽光を取り入れて、室内側の熱を逃がさないようにしたもの。

冬場の太陽の暖かさを取り入れながら、室内側の暖房エネルギーを逃しにくくするので、寒い地域や、北面の窓などにおすすめです。

逆に、夏場の日差しが入り込む窓で採用すると、夏の強い太陽熱が入り込むだけでなく、室内側の熱がこもりやすくなってしまいます。

遮熱タイプ

遮熱タイプ

断熱タイプとは逆で、室外側の中空層側に金属膜をコーティングすることで、太陽光線(可視光線・赤外線・紫外線)のなかで、可視光線を最大限に透過させ、赤外線、紫外線を大幅にカットします。

つまり、室内の明るさを維持しながら、太陽の熱(赤外線)をさえぎり(遮熱)、室内の冷暖房効率を高め、更に有害な紫外線を大幅にカットできます。

夏の強い日差しや西日対策として非常に効果的ですが、逆に冬場の太陽の暖かさを取り込みたい窓には不向きです。

<Low-E複層ガラスのデメリット>

ここまで、Low-E複層ガラスのメリットについて取り上げてきましたが、最後にデメリットについても触れておきましょう。

コスト
これが一番のデメリットですが、高機能商品になりますから、もちろんコストはそれだけアップします。一般的な複層ガラスの1.6倍程度(価格差は9,000円/㎡程度)高くなります。
透過性
薄い膜でコーティングしているので、通常のガラスに比べると、透過性は落ちます。透過性の高い商品も開発されてきていますが、それでも単板ガラスと比較すると透過性は落ちますので、庭や景色などの窓からの眺望を優先させる場合には、あえて選択しない施主もいます。
タイプの違いに注意
遮熱タイプと断熱タイプでは、特徴が異なりますので、誤って採用した場合には、かえって家の快適性を損なう可能性があります。
失敗しない注文住宅のための最重要ポイントとは?

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