日本の気候にあった家づくり

これからの家づくりで求められること

目次

日本で快適な家にするには?

日本の気候・風土の特徴である「年間の気温差が大きく、湿度が高い」というのは、日本らしい美しい四季を生み出す要因ですが、人にとっては決して快適とは言えません。

まず温度については、人によって暑い方がいいとか、寒い方がいいとか快適に感じる温度感には個人的なバラツキはありますが、基本的には暑すぎない、寒すぎない、一定の幅の温度帯(多分15度から25度程度の範囲内)が快適な温度になると思います。

家の役割の一つとして、気温差のある外気に対して、家の内側の気温はなるべく一定の範囲内にとどめることがあります。つまり、厳しい外気の気温差の影響をなるべく遮断し、快適な室内温度を保つことが必要になる訳です。

そこで、家づくりにおける断熱・気密性能が重要になってきます。そのような背景があり、ご存じの通り、ずいぶん前から「高断熱・高気密」が、快適な家の必要条件として、世の中に知られるようになっています。

断熱と気密はセットでなければ効果を発揮できません。性能の高い断熱材を使用したとしても、外気の流通経路(家の隙間)を断たなければ(つまり気密を高めなければ)、急激な熱の移動が起こり、家の中は外気の影響を受けやすくなります。もちろん、逆に気密だけ高めても、断熱材を効果的に配置しない限り、同じような結果になります。

それでは、断熱・気密性能をだけを高めれば、快適な家になるでしょうか?それはなりません。上記でも記述していますが、それは、あくまで必要条件にすぎません。
そこで忘れてはならないのは、日本の気候の特徴である高湿度という点です。これは快適な家にとってはとてもやっかいな問題です。
湿度は、主に以下のような問題を発生させる原因となるからです。

  • 住宅の寿命を短くする結露の発生
  • 人の不快感の助長(不快指数の数値のベース)
  • カビやダニの発生

結露対策は日本の家づくりに必須

上記の問題の中で、最も重要な住宅の寿命を縮める元になる結露の問題について説明したいと思います。

よく引き合いに出されますが、昔の日本の住宅は、兼好法師の「徒然草」の一節「夏を旨とすべし」との考え方から、いわゆる夏型住宅といわれる、隙間が多く、風が通り抜けるような家になっており、結露はあまり問題になるようなことはありませんでした。

しかし、快適性を追求することで、断熱・気密性能を高めることになり、それに伴って結露の問題が大きくなってきました。気密性能を高めることは、空気中に含まれる水蒸気の逃げ場を少なくすることになり、結露が発生し易くなったのです。

結露には、二種類あります。
室内の壁や窓に発生する表面結露と、壁の中、つまり内側の壁と外側の壁の間に発生する内部結露です。
特に冬場の朝に窓などで見かけることが多いと思いますが、怖いのは、このような眼に見える表面結露よりも、内部結露です。
見えない内側で発生しているため、気付かないうちに建物にダメージを与えている場合が少なくありません。リフォームなどの時の壁の解体にその状況を見る場合がありますが、内側がカビで真っ黒になっているケースがあります。これは内部結露が原因です。

結露は、土台腐らせ、釘などの金物を錆びさせる原因になります。つまり住宅の寿命を縮めることになるのです。

それでは、結露の発生メカニズムはどのようになっているでしょうか?

結露というのは、おわかりの通り、空気中の水蒸気が水になったものです。空気の特性として、暖かい空気は多くの水蒸気を含むことができますが、冷たい空気は少しの水蒸気しか含むことができません。このことを空気の飽和水蒸気の量と言いますが、その量は空気の温度で変化し(温度が高いほど多くの水蒸気を含むことができる。)、飽和水蒸気の量を超えた、過飽和になった水蒸気が水滴、つまり結露になります。

冬場の室内で温められていた空気が、朝方に結露になるのは、暖かい空気中では、水蒸気の状態だったのに、朝にかけて温度が下がったために、過飽和になり、水に変化したわけです。

発生メカニズムがわかれば、その対策は見えてきますが、その方法は、温度がなるべく下がらないようにして、水蒸気の量を少なくする(湿度を下げる)しかありません。

断熱・気密性能を高めることは、上記で挙げた一つ目の条件である「温度がなるべく下がらないようにする」対策になりますが、隙間が少ないので、水蒸気の逃げ場が少なく、そのままでは二つめの条件である「湿度を下げる」ようなコントロールができないことになります。

そこで、併せて重要なことは、換気、通気、つまり空気の流れのコントロールです。それによって、室内の湿度を下げるコントロールが可能になります。計画換気、壁面内の通気を考慮した家づくりが、断熱・気密性能の向上と合わせて必要になるのです。

換気・通気は何も結露の問題だけでなく、室内の淀んだ空気、汚れた空気を外に出す機能も果たします。

別ページの「環境に配慮した家づくり」にも関連しますが、シックハウスの原因になるような有害な化学物質(一番有名なものはホルムアルデヒド)が空気中に含まれていたとしても、気密が高いだけの家では、その逃げ場がないため、かえって不健康な家となる可能性があります。

また花粉やカビなどのアレルギーの人にとっても、重要な問題です。気密性能を高めることは、外からの花粉やカビをシャットアウトする機能を持ちますが、外出した時などの機会にやむを得ず持ち込んでしまった花粉やカビなどは、反対に室内から外に出ていきにくいことにつながってしまいます。

このように、高断熱・高気密だけでは、かえって不快で不健康な家になる可能性があるので、換気・通気もセットで考えることが、日本の気候に適した快適な家になることを、よく念頭に置いておいてください。

断熱工法は何がいいのか?

断熱・気密性能を高め、換気・通気に考慮することはご理解いただいたかと思いますが、それでは、世の中に様々な方法があふれている中で、どんな方法がいいのでしょうか?

家づくりに関しても、昔から人はいろいろな工夫をしてきて、科学的な進歩も伴って、その作り方も変化してきています。

断熱の方法についても、どのような工法がすぐれているのかということで、1990年代半ばごろから、内断熱工法(木造住宅では充填断熱工法が正確な言い方)と外断熱工法(木造住宅では外張り断熱工法が正確な言い方)の議論が持ち上がり、今もそれは続いています。(便宜上、この後では内断熱と外断熱で記述を統一しておきます。)

内断熱工法と外断熱工法の違いは、非常に簡単に言ってしまえば、断熱・気密効果を家のどこでとるかの違いです。
木造住宅の場合、断熱材を柱と柱の間に充填するのが内断熱工法で、柱の外側に断熱材・気密シートを張るのが外断熱工法です。

しかし、どちらがいいのかを単純に比較検討すること自体あまり意味のないことだと思います。
なぜなら、家の性能というものは、内断熱か外断熱かで、その良しあしが決定的に決まるものではなく、前述したような換気・通気の方法や使用する資材などで総合的に判断されるべきであることに加え、内断熱であっても、外断熱であっても、その施工内容、施工技術は業者さんによってマチマチであるため、家が完成した後、結果的にどちらがいい工法になるかは一概に言えないからです。

外断熱工法は、一般的に内断熱工法に比べて手間がかかるため、工期が長く、金額も高めになりますが、それだけにその工法を選択していただいたお客さまにとっては、快適性に対する期待感があります。
しかし、外断熱工法は、施工技術が伴わないで仕上げると、期待通りの快適性を上げられずに、かえってお客さまに不満を抱かせることにもなりかねないので、外断熱工法を選択する場合には、より慎重に施工業者の選定を行う必要があります。

結局、どんな方法を選択する場合であっても、断熱性能における、内断熱と外断熱の議論のように、一つの側面だけを見て、どちらのやり方が優れているという判断はしてもあまり意味はありません。

繰り返しになりますが、家はいろいろな工法、いろいろな資材、設計、デザイン、施工技術などの集合体ですから、施主のご家族が満足される快適な家のためには、一点だけを比較検討するのではなく、全体として見て、家としての総合力が高まるように工法や資材を選択していくしかないと思います。

しかし、実際には、このことは、施主にとっては難しいことであり、施主としての役割を超えた部分でもあります。

結局は、まずは信頼できる建築業者さんの選定が第一であることは間違いないでしょう。

日本の気候にあった建築資材はやっぱり木材

日本の注文住宅の建築資材でかかせないのは木材です。
この点については「木の家づくり」でまとめましたので、参考にして下さい。

【第1部:日本で家を建てるなら知っておきたいこと】

  1. 日本の住宅事情
  2. 日本の住宅産業
  3. 日本の工務店の特徴
  4. 日本の気候・風土
失敗しない注文住宅のための最重要ポイントとは?

このサイトでは注文住宅の家づくりに関していろいろな情報を提供していますが、その目的は注文住宅の家づくりに成功していただきたい、というただ一点に集約できます。

それは、裏を返せば、注文住宅を建てたけれどその後の新居での生活に不満が残る、後悔している部分がある、という方が結構いるという現状認識に基づいています。

簡単にはいかない注文住宅の家づくりですが、失敗しないためポイント(成功するためのポイント)は多岐にわたります。

このような数多くのポイントの中で管理人が最重要ポイントを位置づける点は何でしょうか?

公開日:
最終更新日:2018/11/15