注文住宅の費用の内訳を知ろう!

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よく目にする坪単価は建築費用の実態を表さない

注文住宅はオーダーメイドの家づくりですから建売住宅よりも理想の家に近づけやすくなりますが、ほとんどの人にとって悩ましいのがお金の問題、つまりいくらで家が建てられるのかという費用の問題(予算の問題)です。

注文住宅について事前に調べる際に、複合キーワードで費用、相場、価格といったキーワードを絡めて検索する人が多いことからも注文住宅とお金については多くの人にとっての関心事項であることがわかります。

さて、多くの人がまず注文住宅の建築費用として思い出すのが坪単価というワードではないでしょうか?

ローコスト住宅をセールスポイントにしているメーカーでは坪単価20万円台とかを宣伝文句に使っていたりするので、坪単価は一番馴染みのある言葉かもしれません。

しかし、実際の注文住宅の建築費用を見てみると、例えば少し古いですが、以下のようなデータがあります。

都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏、札幌、仙台、広島、福岡)の平均建築費用:3,344万円(延床面積:140㎡)
(社)住宅生産団体連合会による2007年度注文住宅の実際調査

これを坪単価で計算すると約79万円となります。

この金額を聞くと、多くの人にとっては
「えっ、こんな高いの?」
という反応になるかもしれません。

というのも、上記の例でローコスト住宅メーカーはもちろん、他のハウスメーカーや中堅ビルダー、工務店などが坪単価としてホームページやパンフレットなどで提示している坪単価が79万円よりもかなり安いところが多いからです。

なぜこのように乖離があるようなイメージとなってしまうのでしょうか?

それは普段目にしている坪単価が本体工事費用をベースに延床面積も施工床面積として拡大解釈されて安く見せることが常態化しているからです。(この辺については「注文住宅の坪単価は参考になるのか?」で説明しています。)

つまり、施工会社がパンフレット等で提示している坪単価を参考にして、それに希望の延床面積をかけてもそれだけでは注文住宅は建たないのです。

例えば、坪単価50万円を掲げているハウスメーカーがあって、そこで延床面積40坪の注文住宅を建てる場合、50×40=2000万円で家が建つわけではないということです。

ということで、注文住宅にかかる費用の内訳について簡単に説明していきたいと思います。

注文住宅にかかる費用の内訳

上記でみたように注文住宅を建てる場合には、普段広告等で目にする坪単価のベースとなっている本体工事費用以外にも様々な費用がかかります。

それらの費用は、本体工事費用も含めて以下の3種類に分類されます。

  • 本体工事費用
  • 別途工事費用
  • 諸費用

それぞれの費用の内訳について見ていきましょう。

本体工事費用

本体工事費用は、本体という言葉通り建物本体を建築するためだけにかかる費用のことです。

上記で説明したように、注文住宅の施工会社が見せる坪単価はこの本体工事費用をベースに計算されていることがほとんどです。
(また、広告等で注文住宅の価格が例えば1500万円と掲載されているような場合でも、それは本体工事費用のケースがほとんどだと思います。)

ちなみに、注文住宅を建てる場合にかかる全ての費用を総費用として、本体工事費用が総費用に占める割合は70-75%程度だと言われています。

つまり、普段目にする坪単価は単純計算でも25-30%程度は総費用よりも割り引かれていることになります。

本体工事費用は更に大きく以下の3つに分けられます。

  • 躯体工事費用
  • 仕上工事費用
  • 設備工事費用

それぞれ以下のような費用の内訳になります。
(ちなみに、実際に見積をとってみるとわかりますが、内訳の区分は施工会社によって異なります。)

内訳 概要
躯体工事費用 仮設工事費用 安全且つスムーズに施工するために必要となる足場やシート養生、仮設の電気、水道、トイレの費用
基礎工事費用 建築物の構造体を支える基礎にかかる工事費用。現在の木造注文住宅ではベタ基礎が主流
軟弱な地盤、傾斜地などでは費用がかさみます
木工事費用 構造材や造作材など木材の加工にかかる大工さんの作業費用
使用する木材や家の形状、加工の仕方により費用は変化します
仕上工事費用 屋根板金工事費用 屋根にかかる工事費用で、瓦、スレート、ガルバニウム鋼板の葺き付け、水切りや雨どいの工事など
外装工事費用 サイディングやモルタルの吹付、左官仕上など、外壁の表面を仕上げる工事
断熱・気密工事費用 屋根、壁、基礎、床下に断熱材を取り付けて気密をとる工事費用
建具工事費用 ドア、ふすま、障子、サッシなどの木製建具や金属製建具を取り付ける費用
タイル・石工事費用 浴室、トイレ、玄関、外壁などにタイルや石を貼る費用
内装工事費用 建物内部の壁や天井などの塗装やクロス貼り、床のフローリング貼りなどの費用
雑工事費用 防水工事、防腐・防蟻工事、手すりの取り付けなど、その他工事費用
設備工事費用 給排水衛生設備工事費用 キッチン、浴室、トイレなどの設置、それらに関連する配管工事などの給排水のための費用
電気設備工事費用 コンセント、スイッチ、インターホン、メーター、分電盤などの取り付け、配線、アースの施工などの費用
空調設備工事費用 24時間換気の換気口、換気扇の設置、空調ダクトなどの取り付け費用

別途工事費用

建物本体費用では建物本体にかかる費用だけでしたが、建物だけが建っても実際に生活できるものではありません。

別途工事費用とは建物本体以外にかかる工事費用のことで、総費用の15-20%程度かかるとみておくといいと思います。

ただし、別途工事費用に含まれる費用は敷地の条件等によってかなり金額が変わり、事前に予想しておくのが難しいものがあります。

例えば、地盤改良工事費用です。

地盤については周辺の地盤に問題がなくても、実際に敷地内で地盤調査を実施しない限り地盤改良工事が必要になるかどうかはわかりません。

また、敷地と接する道路の下から引き込むガスや水道の引き込み費用も、道路と敷地の高低差、距離等によってかなり費用が変わります。

別途工事費用の主な内訳は以下の通りですが、本体工事費用と別途工事費用の線引きが施工会社によって異なる場合があります。

本体工事費用を低く見せる(つまり坪単価を安く見せる)ために、別途工事費用を多くしている会社もありますから、各社の見積をとって比較する場合には、その内訳をよく見ながら比較して下さい。

内訳 概要
解体工事関連費用 建て替えをする場合、住宅を解体し、庭木や塀、車庫などをを処分するための費用
造成工事費用 敷地に高低差がある場合に発生する整地費用や擁壁をつくる費用
地盤調査費用 建物を支えるだけの地盤強度があるかどうかを調査する費用
地盤改良工事費用 地盤調査で軟弱な地盤とされた場合に必要となる地盤の補強工事費用
インテリア関連費用 家具、カーテンやカーテンレール、ブラインド等の費用
電気工事関連費用 床暖房、インターネット配線、居室内照明器具、エアコン、太陽光発電、蓄電設備等の取り付け設置工事費用
エクステリア関連費用 外構(門柱、門扉、フェンス、ガレージ等)工事費用や庭の造園工事費用
水道工事関連費用 給配水管を敷地内に引き込む費用、水道メータから家に配管する工事費用
ガス工事関連費用 ガス管の引き込み、ガス栓からガスメーターの配管などにかかる費用
設計監理料 プランニングを建築家や設計事務所に依頼した場合に10-15%程度かかる

諸費用

諸費用は上記の工事費用以外にかかる基本的に現金で支払う必要のある費用です。
(諸費用を含めて組むことができる住宅ローンもありますが・・・)

税金、手数料、保険料、祭事費用、引っ越し費用などが該当します。

諸費用は総費用の5-10%程度かかると言われています。
想定外の費用も予算上予備費として織り込んでおくなら、最低限総費用の10%程度は諸費用としてみておくべきだと思います。

内訳 概要
登記手数料 建物表題登記、建物の所有権保存登記など不動産登記のために必要な手数料
建築確認申請費用 建築で必ず必要となる建築確認申請にかかる費用
確認検査手数料 建築基準法に基づいて行なわれる審査・検査費用
印紙税 工事請負契約書、住宅ローン契約書の作成に必要な印紙代
登録免許税 法務局に対して登記申請(表示登記、所有権保存登記等)した時にかかる税金
固定資産税 土地や建物といった固定資産の所有者に課税される地方税
都市計画税 都市計画区域内の土地と建物に条例で課される地方税
不動産取得税 不動産を取得したときに課税される都道府県税
住宅ローン関連費用 住宅ローンを組む場合に必要となる事務手数料、保証料、団体信用生命保険料など
各種負担金 水道局に納付する上下水道の利用にかかる負担金等
火災・地震保険費用 火災保険はローンを組む場合は義務、地震保険は任意のケースが多い
祭事費用 地鎮祭や上棟式を行う場合にかかる費用
仮住まい費用 建て替えの場合、新居への引っ越しまで暮らす住まいの家賃、敷金礼金、光熱費等
引っ越し費用 建て替えの場合は2回、新築の場合は1回引っ越し費用がかかります
雑費用 近隣への挨拶費用、粗大ゴミの処分費用など
予備費用 何か想定外のことが起こった場合に備えるための費用

まとめ

上記のように注文住宅の費用の内訳の概要を整理してご説明しましたが、家の建築の条件によっては他にもかかる費用が出てきます。

ただし、上記のような費用の内訳を全て覚えておく必要はありません。

実際に施工会社から見積をとって見積の内訳を見たときに、だいたいどんな内容でそのような費用がかかるのかイメージできればいい程度じゃないかと思います。

費用の細かい内訳を覚えておくことより重要なことは、費用削減の方策を知っておくことと、予算配分を適正に行うために費用の大枠をとらえておくことです。

予算化する時には、まずは建築工事費、つまり本体工事費用と別途工事費用の合計に目が向きがちですが、手元資金という観点からは、最後にまとめた諸費用も予算にきちんと織り込んでおく必要があります。

どんな人でも最初は資金繰り上ある程度余裕を見て予算化していくと思いますが、建売住宅という完成品を購入する場合とは異なり、注文住宅の建築においては理想の家に近づけるためにあれもこれも実現したいという要望が多く出てきて、どうしても予算オーバーになりがちになってしまいます。

無理をした予算で住宅ローンを組んで、更に予算オーバーになって手元資金まで使ってしまう。
その結果として新居で暮らし始めたものの、資金繰りが大変で生活の質が落ちてしまう、なんてことになったら目も当てられません。

復習になりますが、注文住宅にかかる総費用を総予算とすると、ざっくりとこんなイメージになります。

総予算=総費用 100% 本体工事費用 70-75%
別途工事費用 15-20%
諸費用 5-10%

【事例:総予算2500万円のケース】

総予算=総費用 2500万円 本体工事費用 1750-1875万円
別途工事費用 375-500万円
諸費用 125-250万円

当初予算としてはこんな感じでざっくりと大枠で見積もっておいて、各社の見積が提示されたら、その内訳を見ながら予算管理していくことが現実的な対応になると思います。

失敗しない注文住宅のための最重要ポイントとは?

このサイトでは注文住宅の家づくりに関していろいろな情報を提供していますが、その目的は注文住宅の家づくりに成功していただきたい、というただ一点に集約できます。

それは、裏を返せば、注文住宅を建てたけれどその後の新居での生活に不満が残る、後悔している部分がある、という方が結構いるという現状認識に基づいています。

簡単にはいかない注文住宅の家づくりですが、失敗しないためポイント(成功するためのポイント)は多岐にわたります。

このような数多くのポイントの中で管理人が最重要ポイントを位置づける点は何でしょうか?

公開日:
最終更新日:2018/05/14