注文住宅の家づくりが楽しくなる、覚えておきたい木材の適材適所の基礎

木材の適材適所

日本における注文住宅で一番多い工法と言えば、圧倒的に木造軸組工法(在来工法)です。

在来工法でないにしても、木材というのは多くの建築において最重要建築資材に位置づけられることは間違いありません。

そんな木材ですが、一口に木材と言っても、様々な木の種類(樹種)があります。

家に使用される代表的な木の種類と言えば、スギ、マツ、ヒノキ、ヒバ、ツガなどでしょう。それ以外にケヤキ、クリ、家具によく使用されるウォールナット、チェリー、タモなんかもあります。

これらは、木材共通の特徴を持っていますが、それぞれの樹種の特性というものもあります。

住宅に使用される木材は大きく分けると、以下の2つになります。

  • 構造材・・・骨組に使用
    (例)土台、柱、筋交い、梁、桁、根太、束、棟木、垂木、胴差し、母屋など
  • 造作材・・・住宅内部に使用
    (例)敷居、鴨居、床、壁、天井、階段、戸棚、長押など

構造材は家を支える重要な役割があるので、まず強さや耐久性が求められます。

構造材として使われる主な樹種と使用例を一覧にしたのが以下の表です。

部位 針葉樹 広葉樹
国産材 輸入材
スギ ヒノキ マツ ヒバ カラマツ ベイヒバ ベイマツ ベイツガ ケヤキ クリ
土台
筋交い
大引
根太
垂木
野地板・床下地

(※)日本住宅新聞より抜粋

先人たちは、昔から知恵を集積して、土台には耐朽性や防虫性のあるヒバ、ヒノキ、クリの赤身(心材)、柱には真っ直ぐなスギやヒノキ、梁には粘りのあるマツ、などというように樹木を使い分けてきて、それが現在にも引き継がれているわけです。

また、造作材として代表的な床材は、使用頻度が高く、直接肌に触れる場所であり、家の中の質感を左右する重要な役割を持ちます。
したがって床材を選ぶ時には、肌触りも重要ですし、木の色や木目といった視覚的なことも大切になるので、お客様の主観的要素が大きくなります。

また使用用途という面では、床材の硬さも考慮に入れた方がいいと思います。
一般的にスギやヒノキといった針葉樹系のものは軟らかなものが多く、ケヤキやクリといった広葉樹系のものは硬いものが多いといわれています。

例えばリビングスペースや廊下など使用頻度の高いところには硬く傷のつきにくい広葉樹系の床材を、そして寝室や子供部屋のようなプライベート空間には木の暖かな質感、肌触りを重視した柔らかい針葉樹系の床材を、というような選び方もできます。

このように建物の使用部位ごとに求められる役割が異なるので、その役割を果たすことのできる木材の種類を選んでいく必要があります。これが適材適所です。つまり「それぞれの木が持つ特性を家づくりに活かすこと」なのです。

ちなみに、上記で赤身(心材)という言葉を使いましたが、これに対して白太(辺材)と呼ばれる部分があります。
心材は樹木の芯に近い、色の濃い部分で、辺材は樹皮に近い色の薄い部分になります。
辺材が木の成長とともに太くなっていくのに対して、心材は木の成長とともに木を支える骨格のような役割を果たすようになります。
従って、家の構造材としては心材が適しているのです。

また木の向きというのもあります。それは上下方向と水平方向です。
立木の状態の時に根元側を「元」、梢側を「末」といいますが、基本的には柱として使用する場合には、立木のままの状態で使用します。
梁など木材を横に使う場合は、木が生育していた場所との関連も考慮する必要があります。
傾斜地の場合は谷側、平地では日陰を向いていた方を「背」、その反対側を「腹」といいます。「背」の方が年輪の幅が狭くなるため硬くなる性質があります。そのため、中央が垂れる心配のある梁材などは「背」を上向きにして使います。

このように木材(無垢材)というのは、自然素材なので、樹種、樹木一本一本、そして部位によって性質が異なります。
したがって、その扱いには熟練の技術が必要になりますが、その一方で扱いやすい均質な性質を持つ集成材というものも現在の建築の現場では多く使用されています。

集成材は、無垢材に見られる狂いや割れ、反り、曲がりなどが起こりにくいので、お客様からのクレームになりにくく、施工業者にとって扱いやすい木材です。
しかし、集成材では木材の魅力である調湿機能を発揮しにくいことや、いくらフォースター(ホルムアルデヒド発散基準をクリア)でも接着剤で貼り合わせて作る人工的な素材のため、敬遠したがる人も増えてきています。
(最近は特に自然素材を志向する人は多くなっています。)

ただし、集成材や一般的な造作材を全く使用せず、すべてを無垢材で建築するとなると建築コストは高くなるのは避けられません。
例えば梁は国産のマツが適していることは間違いありませんが、梁で使用するような太い国産の無垢材は現代では手に入りにくくどうしても高くなります。
従って、落としてベイマツ(北米からの輸入材)にするとか、集成材にするとか、そのような選択になってきます。

そして、施主側でも無垢材に対する理解が不足していると、住み始めてから無垢材の反りや曲がりが発生した時に、大きな問題と感じてしまって無垢材を選んだばかりにかえって不快な思いや嫌な思いをされることも考えられます。

予算はたっぷりあって、無垢材の理解も高く、自然素材志向ということでしたら、純粋に木材の適材適所だけを考えて決めていけばいいのですが、そのような人は稀ですから、結局のところ、通常木材の適材適所を考える上では、施主の家づくりに対する考え方(価値観)、ご予算、無垢材に対する理解などを総合的に判斷して、それぞれの家ごとに決めていく必要があります。

施工業者は、施主側で特に何も言わなくても予算内での適材を選別すると思いますが、せっかく一生に何度とない木の家づくりをするのであれば、木の種類、特性を自分自身で理解していた方がが家に対する思い入れも深くなり、愛着が湧くことにつながると思います。

住んだ後に、「うちの家の土台はヒバで、柱はヒノキ、梁はマツ、床はタモ」というように話が出来る方が絶対楽しいと思いますがどうでしょうか?

木の家づくりをぜひ楽しみましょう!

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      2016/06/10

 - 家づくりコラム