売却しやすい注文住宅の条件とは何か?

売却しやすい注文住宅の条件とは何か?

注文住宅を建てる時に将来の売却のことまで真剣に考えている人は少数派だと思いますが、将来的に生活環境がいろいろと変化し、家の売却を検討しなければならないケースが出てこないとも限りません。

例えば、長く住んでいるうちに子供が巣立っていったり、親と同居せざるを得なくなったりで家族構成が変化したり、転職や転勤で仕事の環境が変化したりというような理由によって、住宅と現実の暮らしがマッチしなくなって住宅を手放すことを検討せざるを得ないような場合です。

上記の例は自分で自宅を売却するケースですが、一方で特に最近問題として取り上げられることが多くなってきた事例としては、自分が亡くなった後に相続した子供らが自分たちで使わないので住宅を売却しようするケースです。
最近のテレビの空き家問題でも取り上げられていましたが、相続した家を売るに売れなくてそのまま放置せざるを得ず困っている人が沢山出てきています。

また、中古住宅に対する需要という点でも変化が起きています。
1990年代前半までは住宅については新築がほとんどで、中古住宅の購入比率は非常に低いままでしたが、2000年代から中古住宅を購入するという比率は上昇傾向にあり、今後も一貫して上昇していくと予想されています。
2030年には48%程度になるという予測があるくらいです。(80%を超える欧米とはまだまだ差がありますが・・・)

人口減少社会に突入している日本では、住宅ストックの問題は避けて通れない問題でもあり、このような住宅を取り巻く将来像を少しでも考えてみると、将来の売却ということを念頭に入れて家を建てるという視点も重要なポイントであることがおわかりいただけるんじゃないでしょうか。

以上のような背景を踏まえ、ここでは売却しやすい注文住宅の条件について、立地条件と住宅条件でまとめてみたいと思います。

目次

立地条件

こう言っては身もふたもありませんが、住宅の売却のしやすさを決める最大のポイントは立地条件になってしまうことは間違いありません。

極端な話、上物の住宅の状態がどうであれ、立地条件さえ不動産の購入希望者に合うものであれば、売買が成立する可能性は高まります。

立地条件については基本的にどうにもなりませんが、上物の中古住宅については気に入らなければ解体して建て直すことが可能だからです。

そもそも今の日本の住宅市場では新築の場合、築25年もすると住宅としての資産価値は基本的にはほぼゼロになってしまうケースがほとんどですから、中古住宅を購入する場合の不動産としての価値としては土地の方がウエイトが高くなることが多くなることからも立地条件が重要なのです。

このように土地の条件次第で売却しやすさが大きく変化してしまう現実があります。

どんな条件の土地がいいのか、と言えばそれは購入サイドの希望によって異なる部分が当然ありますが、基本的に以下のような点が重視されると思います。

  1. 将来にわたる社会インフラが整備されている
  2. 交通の便がいい
  3. 周辺環境がいい
  4. 地域に発展性がある
  5. 地盤として問題がない

将来にわたる社会インフラが整備されている

この点は売却に必要不可欠な土地の条件です。

現在の日本社会では高度成長期に整備された社会インフラが老朽化し、それらの維持メンテナンス費用が莫大で、自治体の予算編成上対応がどんどん難しくなってきています。

そうなってくるとこれまでのように日本全国津々浦々まで電気、水道、ガスを届けることが難しくなっていきますし、道路や橋などの整備も追いつかなくなってきます。

更には学校や病院などの施設、鉄道やバスの交通網、このような家族の生活の支える社会インフラがその地域でどうなっていくのかを考慮しなくてはなりません。

特に過疎化が進む地域では最低限のインフラすらも整わないケースが出てきてしまうことは容易に想像できます。

こうした背景からコンパクトシティー構想に従ってなるべくまとまった地域に移り住んでもらうことを進めている自治体もあるようですが、いずれにしても住宅を売ることを考えた場合には、将来にわたって最低限の社会インフラが整っていることが見込めるような土地でなければ、売却はおぼつかなくなっていくことは間違いありません。

自分で土地を購入する場合はもちろん、親からの相続による土地であっても、将来の社会インフラに不安があるなら、その土地に注文住宅を建てることは避けた方がいいでしょう。

社会インフラに不安がある地域の土地はますます売りにくくなっていくはずですから、もしそうした土地を持っているならなるべく早く売却に動いた方がいいと思います。

交通の便がいい

一番目の社会インフラについては、過疎地などの地方の土地を念頭に置いて、土地の売却を可能にする最低限の条件として挙げました。

2番目に挙げる交通も社会インフラの一部ですが、当たり前ですが交通の便が良ければ良いほど土地は売りやすくなります。

特に都市部ではその傾向が顕著です。

昭和の時代では、郊外から都市部への通勤で1時間以上の通勤時間も当たり前の世の中でしたが、今では勤務先と住居がより近くなり、駅から遠い物件ほど売却には明らかに不利になってきています。

今では駅から離れていてもあえて閑静な住宅街に注文住宅を建てたいという人はごく一握りではないでしょうか。

交通の便の良さは土地の価格と比例し、まだ売却のしやすさにも比例します。

注文住宅を将来の負の遺産にしないためにも、土地の購入にあたっては交通の便を考慮しなければならないことは言うまでもありません。

ちなみに以下の記事は、「駅から遠いマンションはなるべく早く売った方がいい」という内容ですが、管理人はマンション以上に駅から遠い一戸建て住宅(注文住宅、建売住宅)は売ることができるなら早く売った方がいいと考えています。

周辺環境がいい

周辺環境がいいか悪いかは人によって受け止め方の異なる部分がありますが、一般的に受け入れられやすい周辺環境の土地であれば売却しやすさはアップするはずです。

まず最初に災害の起こりやすさは考慮すべきだと思います。

洪水、土砂崩れなど水害の起こりやすい地域、地震で被害の受けやすい地域など、自治体の災害予想マップで確認しておくといいでしょう。

音の問題で言えば、交通量の多い幹線道路沿い、鉄道の線路から近い、騒音の大きい工場から近いなどは、やはり多くの人からマイナス評価を受ける条件の一つになります。

それから最初の条件の社会インフラともつながりますが、学校や病院、日常の買い物ができるお店が近くにあるなどの利便性も周辺環境の評価の一つになります。

また、閑静な住宅街がいいのか、いつも人があふれている商店街のような場所がいいのか、というような地域の人たちとの距離感みたいな環境については、人によって感じ方は変わると思いますが、個人的には近隣とのコミュニティが将来にわたっても維持されているような土地の方がいいんじゃないかと考えています。

というのも、社会インフラでも触れているように、これから社会インフラとともに地域コミュニティも崩れていく地域が増えると予想される中で、地域社会での人とのつながりは住環境を考える上で重要な要素になっていくと考えているからです。

地域に発展性がある

地域の発展性については、マストの条件というわけではなく、もしあったらいい条件ですね。

人口減少社会に突入し、経済についても低成長が続くとみられている日本において発展が見込める地域というのはそうそうないと思うからです。

日本全国でみれば、地価が下がり続けている現状では、一部の都市圏にしかそのような土地はないかもしれません。

地盤として問題がない

地盤については、過去に水害が起こりやすい土地などについては軟弱な地盤が多いですが、基本的に購入する前に地盤に問題があるかどうかは確実にわかるものではないので、土地名(水に関する地名がついている場合など)とか災害マップ等で推測するしかありません。

ただし、土地名や災害マップ等の推測から周辺の地盤に問題がないと判断しても、購入した土地の地盤に問題があることはよくあることで、それは実際に地盤調査をしなければわかりません。

地盤に問題があれば地盤改良工事を行うことになるので、費用がかさんでしまいますが、事前にわかることではないので仕方のない面ではあります。

社会インフラは必要不可欠条件

このように見ていくと、注文住宅を建てる場合、将来の売却まで視野に入れるなら、土地選びの重要性がよりわかると思います。

上記の条件では、一番目の社会インフラは必要不可欠条件、2番目から5番目に従ってその重要性は落ちていく感じです。

ぜひ、売却のしやすさも考慮して土地選びを行ってください。

【参考:注文住宅を成功に導く後悔しない土地探し6つのポイント

住宅条件

上記のように住宅の売却と言っても土地条件が最重要になることは間違いありませんが、住宅の条件によっても売却のしやすさは当然変化します。

購入者が中古住宅を建て替えせずに住むケースでは、以下のような住宅の条件が将来の売りやすさにつながるでしょう。

  1. メンテナンスが行き届いている
  2. 住宅としての信頼性が高い
  3. 増改築がしやすい
  4. 違法建築ではない

メンテナンスが行き届いている

この点は非常に重要な条件になります。

メンテナンスの良しあしで、住宅のエクステリア・インテリアといった見栄え、設備等の痛み具合、経年変化の仕方など長く住めば住むほど、その違いは大きくなっていきます。

特に見栄えは重要です。

人間もそうですが、住宅の場合も第一印象は重要で、見た目でNGが出てしまうと、他の条件が良くてもなかなか挽回しずらくなってしまいます。

欧米に比べて日本ではまだまだ中古住宅の売買が少ないですが、中古住宅を売買することが当たり前の欧米では住宅としての資産価値を維持させるために、かなり住宅のメンテナンスに力を入れていると聞きます。

前述したように日本でも住宅ストックの増加とともに中古住宅を購入する人が増加し続ける予測となっており、住宅のメンテナンスの重要性は今後ますます意識されていくと思います。

【参考:家の資産価値を保つ、日本人が苦手なメンテナンスの主なポイント

また、メンテナンスという点では関係ありませんが、見た目という意味では注文住宅を建てる場合に一般的には受け入れにくい奇抜な外観のデザインは避けておいた方が無難です。

施主個人の感性にはマッチしていても、売りやすさの観点ではマイナス評価になってしまいます。

住宅としての信頼性が高い

信頼性の高い住宅は売りやすさではプラス評価につながります。

ブランド力という面ではやはり大手ハウスメーカーの住宅や有名な建築家の住宅の方が信頼性が高く評価されることが多く、買い手がつきやすい面があります。

また、近年では住宅自体にいろいろとお墨付きがもらえる制度があるので、そうしたお墨付きの有無も売りやすさにつながる条件の一つになります。

お墨付きとは以下のようなものです。

  • 住宅性能表示制度(設計住宅性能評価&建設住宅性能評価)
  • 長期優良住宅

住宅性能表示制度は、住宅性能について設計と施工の観点で第三者機関が鑑定してくれるもので、長期優良住宅については所管行政庁から長持ちする住宅としてメンテナンス計画もきちんとなされていると認定してもらうものです。
ここでは詳細の説明は省きますが、どちらも義務ではなく任意なので、こうしたお墨付きを得ている住宅ほど信頼性は高く、将来的に売りやすい住宅になります。

ただし、特に工務店では上記のようなお墨付きの取得に対応してくれるところはまだ少ないのが現状です。

増改築がしやすい

中古住宅の購入者家族のライフスタイルに合わせた住宅を考えた場合には、中古住宅をそのまま住み続けずに、増改築を行いたいという要望も出てくる可能性もあります。

そうした場合に、増改築のしやすい家というのは売りやすさにおいてプラス評価になるでしょう。

具体的には日本で最も建築されている在来工法(木造軸組工法)で建てた家が増改築がしやすい住宅です。

逆に壁で支えるツーバイフォーのような建築物は増改築向きではありません。

違法建築ではない

欠陥住宅はもちろん違法建築の家も売りにくくなることは間違いありません。

建築確認申請が通ってから屋根裏を改造して部屋にしてしまったりというような方法で違法建築となっている物件は世の中に数多くあります。

そうした住宅を売りに出す場合には重要事項説明として違法建築物であることを買い手に説明しなければならないので、買い手がつきにくくなるのです。

まとめ

上記のように立地条件と住宅条件から注文住宅の売却のしやすさにつながる条件をあげてみましたが、立地条件については、いい条件にすればするほど土地の価格が上がってしまうので、どこで予算上の折り合いをつけるのかは難しいところではあります。

住宅条件についても、メンテナンスや住宅の信頼性を示すお墨付きにしても費用がかかってしまうことは間違いありません。

しかし、上記で見てきたように将来の中古住宅の売却のしやすさという観点は重要なポイントの一つになりますので、注文住宅の予算配分を考える時に予め十分に考慮していただきたいと思います。

失敗しない注文住宅のための最重要ポイントとは?

このサイトでは注文住宅の家づくりに関していろいろな情報を提供していますが、その目的は注文住宅の家づくりに成功していただきたい、というただ一点に集約できます。

それは、裏を返せば、注文住宅を建てたけれどその後の新居での生活に不満が残る、後悔している部分がある、という方が結構いるという現状認識に基づいています。

簡単にはいかない注文住宅の家づくりですが、失敗しないためポイント(成功するためのポイント)は多岐にわたります。

このような数多くのポイントの中で管理人が最重要ポイントを位置づける点は何でしょうか?

      2018/11/29

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