資産形成になる家づくり
現在、日本の住宅は、築後20年で、資産価値はゼロ近くになってしまうことが多いと言われています。
(つまり住宅ローンの支払いが終わったころには、ほとんど資産価値のない住宅しか手元に残っていないケースが多い。)
その一方で、日本の住宅平均年齢(平均築年数)は年々伸びていて、現在は22-23年、2030年には29年になるという野村総合研究所の見通しがあります。
昔の大量生産、大量消費の時代はいわゆるフローの時代で、住宅もスクラップアンドビルド型の寿命の短いものが多くなっていましたが、現在の日本では人口減少社会に突入し、人々の意識も変化して、フローよりもストックに目が向けられる時代となってきました。
下の表を見てみましょう。【引用:2030年の住宅市場(野村総合研究所まとめ)】
これは住宅を購入する全世帯のうち、既存住宅(新築以外)を購入する世帯の比率の推移と予測です。
2000年以降上昇傾向が続き、2016年で28.8%になっていますが、この傾向が続くと仮定すると2030年には48%程度になります。
この比率が80%を超える欧米社会とはそれでも大きな格差がありますが、日本でも住宅ストックに目を向ける人の比率は確実に増えていくと見られています。
そうした時代の変化によって、住宅の平均年齢は年々伸び続けているのです。
住宅のストック、つまり既存住宅をいかに有効に活用していくか、というのは社会的要請でもあります。
そのためには「資産形成になる家づくり」が必要だと思います。
欧米のように既存住宅を資産価値のあるものとして売買されるように、既存住宅流通が活発になっていかなくてはなりません。
それでは住宅の資産価値を高めるには何が必要でしょうか?
まずは長持ちする住宅、つまり住宅の耐久性を高めるということです。
耐久性のある家は、日本の一戸建てで最も多い木造の在来工法で十分実現できます。
日本が世界に誇る最古の木造建築物である法隆寺は別格としても、数百年もの風雪に耐えている神殿建築や民家も全国に未だに残っていることを見れば、木材は優れた耐久性を持っていることは明白なことだと思います。
その木材の弱点である長期間の高湿度状態に対する対策(結露対策)、そして従来の在来工法で弱点とされてきた地震対策(耐震+制振など)ができれば、日本の気候・風土を克服できる耐久性が備わった家になるはずです。
2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されたことで、長期優良住宅の普及促進が法的に整備され、実際に今は「100年住宅」や「長寿命住宅」をうたう施工会社が増えていますから、意識の高い施主であれば、資産形成になる家づくりは以前よりも取り組みやすくなっていると思います。
更に、家のメンテナンスも非常に重要なポイントです。
欧米人が家の資産価値を維持するために、メンテナンスに力を入れているように、日本人も自分の家を大事にし、正しい方法で適切にメンテナンスを行っていく必要があります。
【参考:家の資産価値を保つ、日本人が苦手なメンテナンスの主なポイント】
そして、住宅の資産価値向上の取り組みとともに、既存住宅の資産価値を客観的に評価するような仕組み、システムの整備も必要になってくると思います。
日本人もライフステージの変化に合わせて、移住、住み替え、買い替えなどで住環境を変えやすくするために、既存住宅の活性化は重要なポイントになっていくんじゃないでしょうか。
【第2部:これからの注文住宅に求められること】
公開日:
最終更新日:2016/09/23