高齢化社会に対応した家づくり
日本は他の先進国でも経験がない急速な高齢化社会を迎えています。
2020年には、国民の4人に1人が65歳以上の高齢者になり、その後も高齢化はますます進展すると予想されています。
そうした中で、家族構成も変化してきました。核家族化が進み、少子化が進んできたことにより、高齢者を支える世代が少なくなってきました。
そうした影響で、身内の介護者は少なくなっていますが、有料老人ホームに入居できるような高齢者の数は限られています。必然的に、自宅で自力で生活している高齢者が増えている訳です。
しかしながら、今の日本の家の多くは、高齢者が生活するのに適した家にはなっていません。
このことは国土交通省がまとめた平成25年「住生活想像調査」結果の住宅に対する不満率のトップが依然として「高齢者等への配慮」になっていることからも明らかです。
【参考:日本の住宅事情】
残念ながら、家の中での高齢者のけが、死亡事故は後を絶ちません。
家の中で死亡事故が最も多い場所は浴室です。浴室では、家の中の温度差(暖かい場所から寒い場所への移動によるヒートショック)により、血圧が急激に上昇して倒れる人が多いのです。トイレも同様の理由で倒れる人がいますし、視力やバランス感覚などの身体機能の衰えから、階段や段差などで、転倒したり、転落して亡くなる方も増えています。
リフォームなどで、高齢者への対応をするケースもよくありますが、重要なポイントである家の中の温度差の解消は、リフォームではなかなか難しいのが現状です。これからは、やはり、注文住宅の新築時に自分自身が高齢者になったことを踏まえて家づくりを考えることが必要になります。
(正直既製品である建売住宅で十分に高齢者に配慮することは難しい・・・)
すなわち、高齢者が安心安全に日常生活を送れるような住空間を実現することが必要です。
そのためには、様々な部分での対応が必要になりますが、主だったところを挙げてみると、断熱、階段、浴室、トイレ、玄関などです。高齢者の日常生活の動線を考慮して、重点的に対策を講じる必要があります。
家の中の温度差を少なくするためには、断熱性能やエアコンの配置、仕切りをどうするかなどに気を配る必要がありますし、階段は勾配を緩やかにし、手すりを付けるなどの安全性への配慮が必要になります。
浴室やトイレは、そのスペースの広さや、浴槽、便器の大きさ、性能、出入りする時の段差、壁の手すりの位置などを考慮しなければなりません。玄関もそのスペースの広さ、段差を少なくするなどの配慮が必要でしょう。
こうした様々な配慮にはやはり専門的な知識が必要になります。平成11年から福祉住環境コーディネーターの資格制度が発足していますが、そうした専門家の意見を取り入れていくことも必要だと思います。
【第2部:これからの注文住宅に求められること】
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最終更新日:2016/09/23