木の家づくり
目次
木の魅力について
みなさんは、木に対してどのようなイメージを持たれるでしょうか?
「自然素材なので、健康によさそうだけど、耐久性や強度が不安だし、火災になったらすぐに燃えてしまいそう~」というようなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は2つの点について誤解があります。
まず耐久性や強度についてですが、木は強くて耐久性に優れた資材です。強度については、確かに、同じ太さのものを引きちぎろうとすると、鉄のほうが木よりも力を必要とします。 しかし、同じ重さで比較した場合、木のほうが鉄よりも強いのです。重さあたりの圧縮の強さでは、コンクリートの6倍、引っ張りの強さでは、鉄の4倍はあります。また、耐久性については、日本が誇る世界最古の木造建築の法隆寺の例を挙げるまでもなく、他の素材と比較して優れていることは間違いありません。
次に燃えやすいのではないかという点についてですが、意外かもしれませんが、結構火に強い素材なのです。木材というのは、約450度にならないと自然発火しないし、表面は燃えても、芯まではなかなか燃えにくく、強度も保たれます。忘れてはならないのは、火災で怖いのは、火よりも煙です。火よりも化学物質から発生する有毒ガスなどの煙にまかれて死ぬケースの方が多いのです。また、火に弱い素材は、鉄です。鉄は、短時間で温度が上昇し、変形していきます。記憶に強く残っているところでは、世界同時多発テロで貿易センタービルが崩れ落ちたのは、火災による鉄骨の変形と言われています。
それから、自然素材だから健康にいいという点についてはその通りです。
最近、施設を鉄筋コンクリートから木造にしたり、設備を木製にするケースが増えているそうです。学校の授業中に「眠い」「だるい」「集中力がない」などの疲労症状を訴える子供が少しでもいると答えた学校は、木造の校舎の4.4%に対し、鉄筋コンクリートの校舎では1.5倍の6.6%もいた、あるいは老人ホームで木材が多く使用されている施設の方が病気の発生率が低かったというデータもあります。さらには、有名な実験ですが、静岡大学で子マウスをコンクリート製、鉄製、木製の飼育箱で分けて実験したところ、23日間の生存率が、コンクリート製6.9%、鉄製41.0%に対し、木製は85.1%という結果となったというデータもあります。
ここで、簡単に主な木の魅力について整理してみます。
- ◆優れた調湿機能
- 無垢の木には、室内の湿度が高い時には湿気を吸収し、低い時には吐き出す調湿機能があります。このことは、家にとって大敵の結露を抑えることにつながります。
- ◆優れた蓄熱作用
- 木に触れてみればわかります。例えば、冬季に鉄の突き刺すような鋭い冷たさに比べて、木には温かさが感じられると思います。
- ◆ストレス解消機能
- 森林浴という言葉もある通り、木々に囲まれているのは気持ちのいいものです。家も同じです。木を多く使用した家の方がストレス解消機能があります。これは、上記のデータでも実証されている通りです。
- ◆きれいな空気環境の提供
- シックハウスの問題についてとりあげられてから随分と経ち、ホルムアルデヒド放散量の公的規格も作られましたが、最も望ましいのは、化学物質を使用しないことです。この点、無垢の木を使用することが一番安心といえます。
- ◆しなやかな強度と耐久性
- 最後の項で説明していますが、日本の伝統の木造軸組工法によって、木のしなやかな強さと耐久性が活かされ、地震に強い家づくりを可能にします。
- ◆抗菌・防虫効果
- 例えば、ヒバにはヒノキチオールという物質が含まれていて、殺菌力が強く、白アリなどをよせつけません。このため、昔から土台によく使用されています。
木材について
無垢材と集成材
木材には、無垢材と集成材というものがあります。
無垢とは純粋無垢という言葉からきている通り、木そのものということですが、集成材は、集めて成り立つ材料ということで、数枚の板を接着剤で貼り固めたものです。
集成材の第一の利点はくるいが少ない点です。木のクセなどを読む熟練した経験を必要としないので、施工しやすく、品質的な均一性がとりやすいのです。それは、お客様にお引き渡しした後のクレームが少なくなるということにつながります。つまり、施工者サイドにとって扱い易い材料ということができます。
そして、集成材の強度は、無垢材よりも高いというデータがありますが、それは新材としての強度であって、数十年もの間、家の構造材として、厳しい環境に置かれた場合の接着剤の影響、強度の変化というのは、実証されていないと思います。集成材で建てた家の築年数が数十年となってくる今後、その影響もわかってくるでしょう。また、集成材は、呼吸しない木を接着剤で寄せ集めているため、木の大きな魅力の一つである調湿機能を期待できません。
これに対し無垢材は、上記の「木の魅力」でご説明している様々な木の魅力を引き出せる一方で、含水率(内部に含んでいる水分量)が高めで、集成材のようにおとなしくないため、伸縮、割れ、反りなどが生じるという扱いにくさ、品質のばらつき、規格にあわせにくいという面があります。
国産材と外国産材(外材)
みなさんは、米松(ベイマツ)、米栂(ベイツガ)などの木材を聞いたことがあるでしょうか?これは、北米産のマツやツガのことです。
建売住宅や大手のハウスメーカーの家では、利益追求のため、価格の安いこうした外国産の木材が非常に多く使用されています。(約7割)
外国産材は、一般的に強度、耐久性、しなやかさなどの点で国産材に劣ると言われており、品質の悪い外国産材に薬剤を注入して土台や構造材に使用しているケースも聞きますが、私は外国産の木材だからといって、その使用を完全に否定するものではありません。外国産の木材でもいい品質のものはあります。どんな木材であれ木材の品質を見極め、適材適所で使用していくことが必要だと考えています。
このように、外国産の木材を完全に否定するものではありませんが、私はなるべく国産材の使用することをおすすめします。
なぜなら、国産の木材を使用することは、日本の林業に貢献することになり、それは、森林環境への貢献にもつながると考えているからです。
ここで、誤解のないように説明させていただきますが、森林には、自然林と人口林の2種類あります。
国産材を使用することは日本の木の伐採であり、それは日本の森林環境を破壊になるのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、この森林環境への悪影響については自然林の伐採のことであって、人工林の伐採についてはあてはまりません。
東南アジアなどの発展途上国で行われているような原生林を無計画にむやみやたらに伐採することは、間違いなく自然環境に大きな悪影響を及ぼしますが、人工林については、計画的な植林と伐採をしないで放置しておくことは、かえって環境に良くありません。
北欧には、こうした計画的な植林と伐採により木材を輸出しながらも森林面積を増やしている国もあり、日本の森林(人工林)も計画的な手入れを行い、豊かな森林を育てていくことが必要だと思います。
日本の国土の3分の2が森林ですが、輸入木材の比率が約70%も占めており、安い輸入材におされ、日本の林業自体がなかなか成り立っていません。
国産材を使用することは、日本の林業の復活の足掛かりとなり、森林(人口林)環境の改善にもなり、更に住む人は、快適性・健康・耐久性などの木のメリットを享受できます。
近年では住宅メーカーの国産材の使用比率が増えていて、その他の取り組みも手伝って、国産材利用の拡大が期待されています。
【参考:林野庁(第1部 第I章 第2節 木材需要拡大に向けたこれまでの取組)】
家づくりと木材の種類別特徴について
上記の「木の魅力」でご説明している通り、無垢の木には、いろいろな魅力がありますが、その無垢材の種類によってそれぞれ特徴があります。ここでは、家のどの部分に、どのような木を使用するとその特徴が生かせるのかを簡単に説明したいと思います。
土台
やはりヒバ、特に青森ヒバが優れています。ヒノキチオールという天然成分を多く含み、腐りにとても強く、抗菌作用があります。その次に栗やヒノキなどが挙げられます。最悪なのは、米ツガの集成材の土台です。安いので、大手の住宅でこれに防腐剤を注入して使用している例もありますが、家を支える土台にはいい素材を使用すべきです。
柱
柱には、木造軸組工法の特長であるしなやかな柔構造を生かす、柔らかで粘りがあり丈夫な素材、やはりヒノキが優れているでしょう。それから、スギも適した素材です。スギは日本中にある材料なので、これを活かしていくべきだと思います。
梁
平板状のものを使用しますが、それには幅が広い木を必要としますので、日本では希少で、輸入に頼っているのが現状です。最も適していると思われるのは、国産の松ですが、希少で高価なので、なかなか使用できません。そこで、丈夫さでは劣りますが次には北米産の松が適材なのではないかと思います。
床
床は表面に出ていて、毎日の生活の中で酷使される部分なので、頑丈で傷つきにくい素材が望ましいと思います。
そうした観点から適した素材は、チークやナラやタモです。これらは、硬くてキズがつきにくい特性があります。もちろん檜舞台という言葉もある通りヒノキもいい素材です。これらの無垢の木には、合板などでは味わえない、経年によって生み出される木の風格というものを味わう楽しみもあります。
【参考:注文住宅の家づくりが楽しくなる、覚えておきたい木材の適材適所の基礎】
木材の価格
木の魅力についてはご理解いただけたかと思いますが、「やっぱり国産の無垢材って値段が高いんじゃないの~」と思われている方もいると思います。
実際、日本のブランドになっている「木曽ヒノキ」「秋田杉」「青森ヒバ」は高価であり、入手しにくいことは間違いありませんが、木材はまさに「ピンキリ」です。
同じ木の種類でも節付きなどではかなり値段が下がりますから、こうした木材を使用することで、木の効果はそのままでコストは抑えられます。
それでも、外国産材や集成材よりも高めになることが多く、予算配分のこともあるので、すべてに国産の無垢材を使用することはなかなか難しい訳ですが、まずは木の魅力、木材の特性についての理解を深めていただきたいと思います。
木の家づくりの構造・工法
住宅の構造・工法には、いろいろな種類があるのはご存知かと思います。
それぞれの構造・工法には、長所と短所があるので、どこに視点(快適性、耐久・耐震性、設計の自由度、耐火性、価格など)を置くかで、どの構造・工法が優れているかという結論は変わりますし、人それぞれ最重要視する点は異なり、価値観も異なりますから、いろいろな選択結果になると思いますが、現在も圧倒的に選ばれているのは在来工法です。(約7割)
木造では、在来工法(軸組工法)の他に、ツーバイフォー(2×4)工法や木質パネル工法があります。
それぞれの工法については、以下の項目で整理してまとめていますので、ご参考までにどうぞ。
- <木造>
- <鉄骨造>
- <鉄筋コンクリート(RC)造>
【第2部:これからの注文住宅に求められること】
公開日:
最終更新日:2016/09/23