自然素材至上主義にはならない方がいい
そもそも私は〇〇至上主義、〇〇原理主義とか好きではありません。
まあ自分からそのような考え方が好きだと公言する人もあまりいないでしょうが、ある一面の考え方を絶対的なものとして、それ以外を受け付けないような人がいるのは事実です。
自然素材についても突き詰めていくと、至上主義に陥って非常に窮屈な思いをすることになりかねません。
「自然素材はピンキリ」でご説明しているように、自然素材はピンキリで世の中自然素材と謳っていてもいろいろなものがありますし、どこまで自然素材を使っていくかは施主の考え方次第になります。
究極の自然素材の家というのは、工業製品がなかった時代の家、つまり昔の金具も使わない無垢材、漆喰や土壁で仕上げる伝統的な日本の家ということになりますが、これが果たして現代において「いい家」と言えるでしょうか?
確かに環境には優しい家でしょうが、実際に暮らす人にとっては優しい家ではありません。断熱・気密の点で現代の家に比べて格段劣りますし、安全性についても耐震性、防犯性など満足できる家にはなりません。
自然素材至上主義に陥ってしまうと大変です。
家だけでなく、家具なども無垢で統一しなければなりませんし、無垢材の床、造作、家具を選択したとしても、塗料は自然塗料でなくてはなりません。
まず家具は、無垢材もどきの突き板やパーティクルボードの家具が多くありますが、自然素材至上主義になってしまうとそのような家具も選べません。
そして無垢材の塗装では、メンテナンスが楽でキズもつきにくいウレタン塗装の方法もありますが、自然素材ではないので、自然塗料を選ぶしかありません。
しかし、自然塗料は、メンテナンスの面では、定期的に上塗りが必要なので、手間がかかりますし、定期的な上塗りをしてないと、かえって無垢材の表面がカサカサになり、木の焼け具合にムラが出るなどします。
またウレタン塗装に比べてキズが付きやすいので、キズも経年変化として一つの味わいと感じられないと自然塗料を選択しない方がいいかもしれません。
上記は一例に過ぎませんが、このように自然素材を突き詰めていくと、細部にわたるまでいろいろと注意していかなければなりませんし、コスト面でも負担が相当に大きくなるのは避けられません。
このように書いていると「自然素材」についてあまりおすすめしていないように受け取られるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
しかし、私は「自然素材」を絶対的なものとしておすすめしているわけでなく、そのメリット・デメリットを理解し、施主の家づくりの考え方、予算などを総合的に勘案しながら、工業製品の扱いやすさ、低コスト、利便性、耐久性などの良さも考慮して、全体としていい家となるように「自然素材」のいい面を家づくりの随所に生かしていくことが現実的だと考えているのです。
公開日:
最終更新日:2016/09/23