自然素材が注目されてきた経緯
近年は注文住宅やリフォームにおいて、「自然素材」を検討する人が増えていますが、戦後の家づくりを遡って見てみると、戦後しばらくは住宅の絶対的な供給不足が続き、それに対応するため、大量生産・大量消費の工業製品的な家づくりが推し進められていきました。
そうした大量生産型の家づくりの中で新建材が次々と開発され、それらを使用した効率性、コスト重視の家づくりがもてはやされたのです。
その時代においては、昔ながらの家づくりでも使用されてきた「自然素材」は、品質にバラツキがある、施工しにくい、効率性が悪い、コストが高いなどの理由で敬遠されてきました。
しかし、90年代以降そうした家づくり(工業製品的家づくり)が人と環境に与える影響が問題視され、それまでの家づくりの反省の視点に立って見直しの動きが出始めました。
このような背景から快適、健康、安心・安全、省エネ、長寿命といった要素を志向する家づくりの流れが起きて、現在も続いています。
そうした流れの中で「自然素材」にスポットがあたることになったのですが、直接的には一つの契機がありました。
それは、シックハウス症候群の問題です。
シックハウス症候群についてはご存知の方が多いかと思いますが、接着剤や塗料などに含まれるホルムアルデヒド等の有機溶剤、防腐剤等から発生する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds, VOC)などを起因とする住宅由来の健康障害です。
大量生産型の家づくりでは、原因物質を発散する新建材が多く使用され、一方で建物の気密性が高まってきたために、室内空気の汚染による健康障害が報告されるようになってきました。
この問題が社会問題化して、原因物質を減らすために様々規制がかけられるようになって、現在に至っています。
シックハウス症候群については、ここでは詳しく触れませんが、いずれにしてもこの問題を一つの契機にして、原因物質を発散しにくい建築素材として、多くの注目を受けるようになったのが「自然素材」なのです。
こうした世の中の流れの中で注目され始めた「自然素材」は、シックハウス症候群やアレルギー、ぜんそくといった疾患に悩む人だけでなく、環境意識や健康意識の高い人、従来の画一的な住宅に満足しない人などを中心に家づくりに取り入れられることが多くなっています。
さて、ここまで「自然素材」という言葉を当たり前のように使ってきましたが、そもそも建築において「自然素材」とはどのようなものでしょうか?
実は明確な定義づけはありませんし、何か基準があるわけではありません。
(このことが問題なのですが、「自然素材はピンキリ」で取り上げます。)
管理人が簡単に人に説明するならば、「自然(天然)由来の材料をベースにした建築資材」ということになります。
建築における代表的な「自然素材」は以下になります。
- 無垢材(天然木)
- 壁系(珪藻土、漆喰、土壁など)
- クロス系(紙、布など)
- 塗料系(あまに油、ひまわり油、ヒバ油、蜜ろうなど)
このサイトでは、無垢材以外の個別の自然素材を取り上げることはしていませんが、個別の素材で興味のある素材があれば、ネットや書籍で詳しく調べてみるといいでしょう。
公開日:
最終更新日:2016/09/23