組んでからでは遅い!住宅ローン(資金計画)で多くの人が陥りがちな重大な問題点
家づくりの資金計画というと、まず土地と建物を取得して新しい家に住むまでの様々な費用を含めた総支払額を計算し、自己資本として最初に充当する金額、親からの援助金額(もしあれば)、そして住宅ローンとして銀行などの外部から借りる金額をおさえ、月々のローンの支払いが現在の家族収入と照らし合わせて無理がないか、現在賃貸で家賃を支払っているなら、その家賃と比較して同程度以下のレベルか、をチェックする方が多いと思います。
建売住宅やマンションをすすめる業者でも、上記のような確認を行うくらいで、セールストークでは、
「現在の家賃の範囲内でこんな物件を購入できます。家賃を払い続けるくらいなら、資産として自分が所有できる方がいいですよ。」
なんて言ってくることもあります。
結局、販売のためにローンの審査さえ通ってしまえばOKというところが多いので、その家族のための資金計画を真剣に考えてくれるところはあまりないのではないでしょうか。
こうした一般的に行われている資金計画のどこに問題があるのでしょうか?
それは、現時点での収支バランスでしか判断していないということです。
もちろん、現在の収支バランスの検証も必要ですが、大事なことは将来を見据えた収支バランスです。
今は先行き不透明な時代です。
収入が右肩上がりに上がる保証はなく、現状維持が精一杯、成果部分・報酬部分が大きいので安定しない、退職金もどうなるかわからないし、年金もいつから(今68歳からなんて議論もでているくらい!)、そしてどのくらいもらえるのかわからない、さらに支出に目を向ければ、消費税率引き上げ、様々な物価上昇、医療費アップなど、将来的な収支バランスとしては、いい材料はほとんど見当たりません。
こういう時代だからこそ、将来を見据えた資金計画が必要になります。
それにはまず必要なことは、自分の家族のライフプランを明確にしておくことです。
少なくとも、収支に大きな影響を与える、家族収入の見込み、家づくり、子供の教育、老後の生活はおさえておく必要があります。
家族収入については、特に共働きの場合は要注意です。
子育て期間中でも、現在の仕事を夫婦が二人とも続けられるのかを判断しておく必要があるでしょう。奥さんの収入の比率が高ければ、辞めてしまうとそれだけで収支がひっ迫してしまいます。
それから、子供の教育費はどのくらいかかるかご存じですか?
大学卒業まで全て国公立で自宅から通学でも最低1000万程度、私立や一人暮らしなどになってくるとその2倍以上かかってしまうという試算があります。
それから、退職後の老後の生活ですが、夫婦二人の生活費は暮らし方にもよりますが30万円弱と言われています。それを年金だけで補えれば理想的ですが、将来の年金制度に不安もありますし、現在でも年金だけでは生活できない人が多く、将来的にはそうした人はますます増加していくと予想されます。健康面でも突発的な出費が考えられますし、退職時点である程度の資金はもっていたいものです。
これら以外にも収支に影響が出そうなことは、書き出しておくといいと思います。
(例えば車のローンや、生命保険などの保険の支払や満期など)
データがある程度そろったら、年間の収入と支出を家族の年齢別に表にしておくとわかりやすいと思います。
それから、注意しなければならないことは、住宅ローンの選択です。
リーマン・ショックの金融危機の時によく耳にしたサブプライムローンに住宅ローンの問題が見えてきます。
サブプライムローンは、サブプライム、つまりこれまでなら住宅ローンを組めないような低所得者層に対しても、住宅を購入してもらえるように開発された仕組みですが、最初の数年間は比較的低金利に抑えられていて、低所得者層でも収支バランスのとれる仕組みになっています。
ところが、一定期間後には金利が上昇するのです。そうなってくると収支がひっ迫してきます。
それでも住宅価格が上昇している間は、その間の住宅価格上昇分をキャピタルゲインとして、売却すれば問題は起きませんでしたが、住宅価格の下落で一気に問題は表面化したわけです。
日本にも似たような住宅ローンはあります。
よく数年間は特約金利として、低金利におさえられているものが、それです。
特約金利の期間が終了すれば金利が上昇し、それまでより収支は悪化します。
わずか数年の特約金利などに目を奪われてはいけません。
ライフプランについてもそうですが、ローンについても長期的な視点が必要です。
円の金利は、歴史的な低金利レベルで張り付いた状況がしばらく続いています。
自民党の安倍政権が誕生し、アベノミクスを打ち出してからは潮目が変わったかに見えましたが、金利はまったく上昇のきざしを見せません。
このような背景から、住宅ローンの借り換え件数が増えている状況になっています。
ただし、将来的な金利上昇リスクの火種はくすぶっているといっていいでしょう。
一旦火がつけばコントロール不能になる恐れもあると思います。
管理人は金融市場の専門知識はありませんが、金融市場の見通し以前に、住宅ローンの金利の選択というのは、住宅ローンを組む人それぞれの事情にもよると思います。
一つの例としては住宅ローンの期間があります。若い世代でフルで35年ローンを組むなら全期間固定金利型の選択はありだと思いますが、もっと上の世代で期間が10年以下のような場合、退職金で繰り上げ返済を計画している人などは、変動金利のメリット(固定金利よりもかなり低金利)を放棄してまで、固定金利の住宅ローンを組むのはどうかな?と思うわけです。
さて、ここまでライフプランをベースにした資金計画、住宅ローン選択における留意点について触れてきましたが、いずれも長期的な視点が必要だということはご理解いただけると思います。
長期的な視点で資金計画を立てていくと、住宅ローンとして借りることのできる金額よりもコンサバな借入金にした方がいいことが見えてくるはずです。(いくら借りることができるかではなく、将来を見据えたライフプランを前提にいくら返済できるかで考えていくべきです。)
こうしたアドバイスは、専門家であるFP(フィナンシャル・プランナー)から受けることが理想ですが、自分自身でもできることです。
面倒くさがらずに、ぜひやっていただきたいと思います。
無理な資金計画で後悔するかもしれないのは、自分自身とご家族なのですから。
家を建てた後にローン追われるような生活になってしまっては、新しい家での生活は、精神的な快適さとはかけ離れてしまうでしょう。
最後に、ローン破綻のリスクを減らすチェック項目を挙げておきます。
- 頭金と諸経費で建築費の3割程度を確保できる
- 新築を建てても預貯金は少なくとも200万円程度残る
- 住居費としてローンの返済額だけでなく、修繕費、固定資産税、団体信用生命保険料、火災保険料などを見込んでいる
- ローンを返済しながら、ある程度の貯蓄ができる
- 転勤、転職、退職などの場合、どうするかを家族で話し合っている
- 変動金利など途中で金利の見直しがあるローンの場合、金利が上昇した場合の返済額のシミュレーションをしている
- 60歳時点でのローン残高を把握し、60歳までに完済するためには、どのように繰り上げ返済をしていく必要があるか考えている
上記のチェック項目について、あなたはいかがですか?
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最終更新日:2017/10/13