水害リスクに備えた土地選び
今この時期としては、史上最強クラスの台風8号が沖縄を襲い、日本列島を縦断しようとしています。
近年台風の発生件数が増え、それに伴い日本列島を直撃するケースも増えています。
(今年は今の時期でもう8号!)
台風だけでなく、特に今の梅雨の時期は、大雨による水害も全国的にとても多くなってきています。
それに気になるのが、都市部などでの集中豪雨や雹(ひょう)などの被害。
先日の東京の三鷹市、調布市を襲ったひょうの映像に衝撃を受けた人も多いんじゃないでしょうか。
不安定な大気から狭い地域で積乱雲が発達して、集中豪雨、雹、竜巻なんて被害をニュースで見ることが多くなったと感じるのは気のせいではないでしょう。
これらの原因の一つにあげられているのが、海水温度の上昇傾向ということで、背景には地球温暖化の影響があると言われています。
この傾向がこれからも続くとすると、日本の気候は現在の温暖湿潤気候(沖縄など一部の地域を除く)から、亜熱帯性の気候へのシフトしていくことが予想されます。
そのような気候変動の過程で、異常気象と言われている台風の多さ、集中豪雨、ひょう、竜巻などが、そのうち異常でもなんでもなく、普通気象(こんな言い方はないと思いますが)ということになるかもしれません。
さて、上記のような気象によって、多くの水害がもたらされていますが、これからは水害に対する意識をこれまで以上に持っておく必要があるのはご理解いただけると思います。
まず、最低限認識しておきたいのが、自分の住んでいる土地(あるいは土地購入を検討しているなら、購入を検討している土地)にどのようなリスクがあるのかということです。
これには、自治体がそれぞれ公表しているハザードマップが役に立ちます。
ハザードマップには水害だけでなく、想定される自然災害の範囲、程度などの情報とともに、避難場所、避難経路など情報が示されています。
ただし、「想定される」という点が問題です。
東日本大震災が、「想定」という言葉がいかに危ういかを世の中に知らしめましたが、「想定」とは人が予測しうる範囲であり、これを超える「想定外」ということは十分に起こりうることを全ての人が知ることになりました。
大震災以降、ハザードマップは全国の自治体で見直され、より厳しい条件をベースに設定されてきていますが、人の手でつくられている以上それを過信すべきではないのは変わりありません。
しかし、情報として役に立つこともまた事実です。
何の情報も持たないよりも、はるかにマシということは強調しておきたいと思います。
もし、自分の土地、あるいは購入を検討している土地に関して、ハザードマップを確認していないなら、必ず確認しておくことをお勧めします。
水害に絞れば、河川の近くや、低い位置にある土地は被害を受けやすいのはもちろんですが、最近の集中豪雨では、道路の排水設備が追い付かなくて、高台にある水害には比較的安全と言われた土地でも、冠水するケースも出て来ているので、どこに住んでいても水害のリスクはあると考えておいた方がよさそうです。
ただし、これから土地購入を検討しようとしている人は、あえて水害リスクの高い土地を選ぶことはないので、以下の点を心がけておきましょう。
- 検討している土地についてハザードマップで自然災害リスクを確認する。
(ただし過信はしない。) - 雨の日に現地に行って、周辺の道路状況や周辺の土地などを確認する。
2つ目の現地調査ですが、晴れた日に行う人は多いと思いますが、水害リスクを考慮するなら、雨の日の実地調査もしておく方がいいでしょう。
特に、周辺道路の水の流れは重要です。
周辺よりも低い土地で、その傾斜が非常に緩やかであっても、水はどんどん低い方へ流れますから、自宅前の道路排水が追い付かなくなり、水があふれることもありえるからです。
先日の三鷹市のひょうのニュースでは、道路が川のようになって、ひょうが流れて行く映像が流れましたが、低い土地であれば、豪雨によって道路が川のようになり、更には自宅が浸水なんてことは十分にありえるのです。
このようなリスクは、ハザードマップによってある程度は確認できるとは思いますが、自分たち家族がこれからずっと暮らすかもしれない土地ですから、土地購入を検討する場合には、自分の目でリスク状況を確認することが必要ではないかと考えています。
それから最後に土地選びとは直接関係ありませんが、水害リスクに備えて、火災保険には水害もカバーできる補償はつけておいた方がいいと思います。
火災保険に水害の補償をつけていない人は結構いますが、前述したようにどんな土地でも水害リスクがあることから、水害もカバーできる保険に入っておきましょう。
上記のコラムを書いてから、一ヵ月ちょっとの2014年8月20日未明、広島市で同時多発的な非常に大規模な土砂災害が発生しました。現時点(2014年8月23日)でも被害の全貌は明らかになっていませんが、90人もの死者・行方不明者となっています。
亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
去年の伊豆大島の土石流災害といい、今回の広島の大災害も単なる水害という表現では軽すぎる非常に甚大な被害となっていますが、住む土地の選択によって、生死が分かれてしまう恐れがあることからも土地選びがいかに重要かということになると思います。
広島県は「まさ土」と呼ばれるもろい土が広がっていて、土砂災害危険地域が日本一多いということを自分は初めて知りましたが、広島県の住民の意識としてもそのようなリスクをあまり認識していなかったことがうかがえます。
「まさか、自分の住んでいる土地が・・・」
という感じのコメントが多くありました。
既に危険地域に住んでいる人に対しては、意識を高めてもらって、常日頃避難に備えた訓練をしておくとか、危険が差し迫っているなら移転するとか具体的な行動をとる必要がありますが、一方これから住む土地を選ぶ人は、必要以上に災害リスク(水害だけでなく)を考慮しなければならないのは言うまでもないでしょう。
いずれにしても、既にコメントしているように、今後も異常ともいわれる気象条件においては、日本のどこでも水害リスクは起こりうるので、常日頃の備えとともに、土地選び(購入でも賃貸でも)ではリスクを十分に考慮してほしいと思います。
2016/06/10